あっくんと生きる

あっくんと生きる

「左心低形成症候群」と診断された息子の闘病記+親の感情

あっくん、手術当日記念!?フォンタン手術までの経緯!

Sponsored Link

こんにちは。

あっくん、手術当日を迎えております。朝8時30分にオペ室に行ったきり、今はどこがどうなっていることやら汗。

家族待合室でソワソワしております、モリケン一家一同でございます。

そんなわけで(どんなわけだ)、もう色々ありすぎて説明しきれていなかったこれまでの経緯をおさらいしつつ、 今回の手術の内容について共有します。

はじめに

あっくんは左心ちゃんの中でもレア中のレアの症例

実はあっくんの現在の症状は、極めて稀有な事例と言わざるを得ない状況です。

「小児」というだけでそもそもの症例の母体数も少なくかつ成人よりも手術が難しいのに、心臓病は更に母数が少なく、更に更に左心低形成症候群と言ったら数万人に一人。そして症例がその中でもレア中のレア。 公開されている論文等の第三者的・客観的な文献を素にした治療はもはやできない状態に至っております。 (姿形だけ見れば、元気そうなのにね…。)

ゆえに、循環器内科の経験と脳内シミュレーション+心臓血管外科の野生の勘と執刀技術力に頼り切った、 仮説に次ぐ仮説の重ね合わせで、なんとかここまで来ている状況です。

他の左心ちゃんのご参考になるかわからないけど…

あまりにレアな症例なので、他の左心ちゃんのご家族のお役に立てるか分かり兼ねます。

ただ、そんな状況でも元気に生きているという現実があります。

ですから、左心ちゃんを授かることに打ちひしがれているご家族の皆さん。 どうかお子さんを信じて、気を保ってください。

こんな状況でのあっくんでも生きているんです。なんとかなるんです。

そんな左心ちゃんたちのお顔を直接拝見することはできませんが、一人でも多くの左心ちゃんそして心臓病児の命が、一日でも長く繋がれ、その生を全うできることを、心より願っています。

健常児が羨ましい、うちの子のほうが治療が進んでいる、あの子に抜かれた。羨望・嫉妬・後悔…気持ちは分かります。でも、そんなの無しにしたいと思うのは私だけでしょうか。みんな等しく授かった命です。それぞれの家族は表に出さないまでも、各々に辛い思いを抱きながら生活しているはずです。そんな負の感情に時間を割く暇があれば、病児や家族の幸福のために時間を使いたいと思うものです。

前回の緊急手術時のフローチャートをおさらい

前回のシャント形成術において(分かりにくいと評判の)フローチャートを作成しましたが、今回の手術で下記のようなルートをたどることが確定しました。

f:id:MoriKen254:20190228155644p:plain

あっくん:分かりにくいのにまた出すんですか?けしからんです!

おとーちゃん:まぁ、せっかく作ったので…。てか、あなたはオペ中なんだからじっとしていなさい!笑


前回肺動脈が閉塞した際に形成したシャントにより、左肺動脈が十分に成熟しました。そこで、今回目指すは、グレン再建+フォンタンの同時手術!ただし、グレン再建で使用する血管は人工血管とする。

再度肺動脈が閉塞してしまった場合に両肺フォンタン不成立になってしまうリスクがある。その際はリスクヘッジとして受動的に片肺フォンタンとなるようなフェールセーフ的措置を施す。

フォンタン循環、あるいは片肺フォンタン循環が不成立だった場合、穴あきフォンタン循環にテイクダウンする。

だいたい、こんな感じっぽいです。

あっくんのここまでの全ての手術をおさらい

さて、前置きが長くなりました(いつものことか笑)。おさらいしていきましょう。

まだ齢2歳半のあっくん。ここまで3回の心臓手術+2回の心臓カテーテル術を経て、4回目の心臓手術を迎えることになりました。

中々説明しても理解してもらいにくいくらい複雑な事象が起きていて、本当にもう、色々な異変が起き続けていて、心労半端ないっすよ。。。

心臓手術1:両肺動脈絞扼術(生後5日)

www.akkun-ikiru.com

出生直後、左心ちゃんは次のステップである最難関の大山であるノーウッド手術までの間、その特殊な循環系(動脈管開存症+心房中隔欠損症 を人為的に保持)を維持する上で、肺血流量の増大による疾患が懸念されます。

そこで、両肺動脈絞扼術(通称バンディング)により血管を人為的に補足することで、その血流量をコントロールします。

f:id:MoriKen254:20190228155910p:plain

あっくん:これは余裕でしたな!

おとーちゃん:そうですな!って、あなたはオペ中なんだから(以下略


心臓手術2:ノーウッド+グレン手術(生後4ヶ月)

www.akkun-ikiru.com

www.akkun-ikiru.com

よくある症例としては、バンディングを延命し、まず最難関のノーウッド手術に臨み、その後ある程度の体力増強と循環系発達が見込めた段階で、グレン手術を行う運びになることが多いようです。

ざっくり言うと、それぞれの手術は下記のような効果をもたらします。

  • ノーウッド手術

    • 左心ちゃんの大動脈は機能していないので、何とかしないと間違いなく死亡する。
    • そこで、右心系から展開されている肺動脈を、弓部大動脈に接続し、新規に大動脈を形成する。
    • それだけでは肺動脈への血流が遮断されるため、上記肺動脈からシャントにより肺動脈への血流を確保する(通称:佐野シャント)。
  • グレン手術

    • ノーウッド手術のみでは、重度のチアノーゼが残留する。
    • そこで、前記シャントを回収し、代わりに静脈を肺動脈に直結させチアノーゼを解消したい(フォンタン循環)。
    • しかし、心機能や循環系が未発達な状況では、全身の血液を一度に肺動脈に流すことはリスクが高い。
    • そこで、フォンタン循環への第一歩として、まずは比較的流しやすい上半身の血液だけを先に肺動脈に直結させる(グレン循環)。
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/M/MoriKen254/20170109/20170109005458.png

あっくん:これも余裕でしたな!

おとーちゃん:そうです…ってイヤイヤイヤ!これは流石に11時間の大手術でしたから ^^; よく頑張ったよ、本当に…。


当初あっくんもこれら2つの手術を順序的に実施する予定でしたが、肺動脈の成熟が良好だったので、ノーウッド+グレン手術1回で終わる方針に切り替えることができました。これ自体、本当に不幸中の幸いだったと言えます。

  • ノーウッド+グレン手術の特徴
    • 元来2回行うべき手術を1回で済ませることができるので、体力の消耗を抑えられる。
    • ノーウッド手術時のシャント装着を省略できるので、人工物の侵襲を1回分回避できる。
    • ただし、体格が整うまで動脈管の開存を維持しなければならない。
    • 長期間に渡り24時間の点滴(プロスタグランジン投与)が必須となり、長期入院+生活上の制約が回避できなくなる。
    • しかも、それだけの痛手を負って待ったところで本当に同時手術ができるかの確証は持てないので、家族の精神的なストレスも増大しやすい。
    • あっくんは運良く同時手術にこぎつけたので、幸運でした。
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/M/MoriKen254/20170109/20170109005513.png

あっくん:これも余裕でしたな!

おとーちゃん:そうです…ってイヤイヤイヤ!これは流石に11時間の大手術でしたから ^^; よく頑張ったよ、本当に…。


こうして、あとはこのまま順調に行けばフォンタン手術をあと1回おこなうだけで、晴れてフォン単循環・単心室系の完成となり、日常生活における酸素とはおさらばできると、楽観的に捉えていました。

心臓手術3:大動脈・左肺動脈間シャント形成術(1歳9ヶ月)

www.akkun-ikiru.com

www.akkun-ikiru.com

www.akkun-ikiru.com

主治医も私達家族も、そんな楽観的な感情を抱いて「まぁ今回も順調でしょう」と言われて、ノーウッド+グレン手術退院1年後の心臓カテーテル検査で全くの想定外の事態が生じます。青天の霹靂とはこのことです。

なんと、あっくんの肺動脈が完全に閉塞してしまっていたのです。それに伴い、左肺動脈の血流が遮断され、今にもなくなってしまいそうなほど細切れの状態になっていました。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/M/MoriKen254/20180525/20180525223827.png

あっくん:「晴天の霹靂」ですな!

おとーちゃん:「青天の霹靂」らしいです ^^;


泣けど喚けど、どうしようもありません。主治医からも歯切れのよい回答が得られません。

  • いつ詰まったのか?
    • 分からない
  • 原因はなにか?
    • 分からない。
  • 血液検査で異常は無かったのか?
    • いずれもかなり良好な値だった。
  • エコー・レントゲンで異常は無かったのか?
    • 左肺動脈だけは物理的な構成の制約で、極めて発見が難しかった。
  • カテーテルの頻度を上げれば発見できたか?
    • 分からない。
    • 閉塞は、兆候の検出ができる状態になったら数日で起こってしまう。
    • 毎日カテーテルをするくらいの検査をしないと検出は困難。

こうなってしまっては、もはや閉塞部は諦めるしか無いようです。

そこで、まずは閉塞部の出口である死にかけている左肺動脈を復活させ、閉塞部の入り口である肺動脈の中心部を再建する方針を取る戦略を取ることになりました。

具体的には、まず大動脈から左肺動脈に対してシャントを形成する緊急手術を施すこととなりました。

心臓カテーテル術1:バルーン血管形成術(1歳9ヶ月)

www.akkun-ikiru.com

www.akkun-ikiru.com

www.akkun-ikiru.com

シャント形成術後しばらく様態は安定していました。

ところがなんと。。。術後2週間後にこれまた重大な事件が発生します。

再度カテーテル検査をしたところ、今度は形成したシャントが閉塞してしまったのです。。。

そんなことがあるのか!?誰に聞いても、あっくんほど立派に成熟した肺動脈でこんなことが起こるなんて、今まで見たことも聞いたこともないという状況なのです。

外科・内科の両主治医もこの時の事件は相当トラウマになっているようです。。

  • いつ詰まったのか?
    • 分からない
  • 原因はなにか?
    • 分からない。
  • 以下略

もう、踏んだり蹴ったりです。

そこで、詰まってしまったシャントを再形成するために、今度はバルーンによって血管を拡張する心臓カテーテル術を実施しました。

ところが、結果は失敗です。もともと大動脈と肺動脈をつなぐようなシャントは物理的には不自然な構成で、それに対応したようなカテーテル自体が心臓病治療用としては存在しないのです。その中でも最も適していると思われた冠動脈治療用の「マイクロカテーテル」では駄目だったのです。

f:id:MoriKen254:20190228160755p:plain

あっくん:ガガガガーン!

おとーちゃん:笑い事じゃなかったんすから、本当もう… (T_T)


もはやバッテンだらけでワケワカメですね笑。

日本でもトップレベルに超経験豊富な主治医からも、厳しい状況を伝えられます。

「もう考えられる限りの全ての治療を施しましたが、この病院でこれ以上の措置を行うことはできません。」

これはすなわち、両肺フォンタン循環を断念せざるを得ないとう状況です。言い換えれば、一生日常生活で酸素が必要だよ、ということなんです。

これは衝撃です。今まで順調だと言われていただけに、その落差の大きさに家族感情が追いつきませんでした。。。

「あっくん…こんなに…頑張ったのに…どうして…?」

その問いには誰も答えることができません。理由なんて、無いんですから。

心臓カテーテル術2:バルーン血管形成術+ステント留置術(1歳10ヶ月)

www.akkun-ikiru.com

そんな絶望の淵に立たされていたとき、循環器科の主治医から吉報が入ります。

「まだ可能性があるかもしれません。」

なんと、主治医がたまたま参加した学会において、高齢者の症例ではあるにせよ、同様の症状に対してシャント再形成術を成功させた事例の発表があったようなのです!

何というタイミング!何という奇跡!!

なんと、使用するカテーテルは心臓病用ではなく、脳手術用の「マイクロマイクロカテーテル」なるアイテムとのこと。その発想はなかった。

主治医は早速そのカテーテルを業者に手配し、早急に再カテーテル術を実施してくださいました。

結果は…なんと成功!!!更に、再度シャントが閉塞することを回避するために、シャント内にステントを留置する処置まで成功!すごい!すごすぎる!!!

f:id:MoriKen254:20190228160919p:plain

あっくん:テイクツー!アークション!

おとーちゃん:カーット!完璧です!おつかれーっしたーーー!!!(ToT)


実際には、「マイクロマイクロカテーテル」がクリティカルに効いたと言うよりは、大腿静脈からのアプローチができなくなっていたので、大腿動脈からアプローチしたらうまく言ったという、物理的な構成上の問題が解消されたことが大きい、みたいなことを聞いたような気がしましたが、あまり突っ込んで聞かなかったし、もう一年くらい前のことで忘れた笑。てかそこはもはやどうでもいい!笑

とにかく、もう一回チャンスを与えてくださったことが効いたんです!

ありがとう、主治医の先生!ありがとう、そんな症例を発表してくれた先生!そして、似たような症状から回復してくれたどこかのおじいちゃん!

これで、まだ両肺フォンタンを諦めなくても良さそうだという算段がたったわけです。

ただ、まだ強敵の、肺動脈の閉塞という状態は変わっておりません。

今回の手術

www.akkun-ikiru.com

そんな紆余曲折を経て、カテーテル検査の結果、なんと細切れになっていた左肺動脈が見事に復活!これをうけ、ようやく閉塞した肺動脈の再建を試みることができる状態になりました。あー!もうここまで長かったー。。。

f:id:MoriKen254:20190228161107p:plain

あっくん:お、なんか左右の肺動脈がいい感じに太くなっているようですな!?

おとーちゃん:左のが少し細いけど、それでも上出来だよ!あの絶望の縁から、よくココまで復活してくれたよ、本当に。。。


それを受けて今回の手術です。

当初の計画

当初の計画では、閉塞した肺動脈を人工血管で再建することが目的でした。つまり、グレン循環の再形成のみを行うということです。

具体的には、以下の2つの処置のみを施すということです。

  • 左肺動脈に挿入したシャントを除去する
  • 肺動脈の閉塞部を人工血管で再建する

したがって、グレン循環での経過観察を経て、フォンタン手術は将来5歳位で行う予定でした。

f:id:MoriKen254:20190228162414p:plain

あっくん:ふむふむ

おとーちゃん:ふむふむ


急遽方向転換

ここに来てまた急遽方向転換です。

なんと今度は、肺動脈の再建と、下大静脈の肺動脈への直結を同時の行う運びになりました。

つまり、グレン+フォンタン同時術ということです。

f:id:MoriKen254:20190228162152p:plain

あっくん:ノーウッド+グレンのときも同時術でしたな!

おとーちゃん:同時術とご縁があるようですな、あっくん ^^;


ノーウッド+グレン同時術に続き、テイクダウンを経て、グレン+フォンタン同時術とは、あっくんには同時術との強いご縁がおありのようで ^^;

なぜ方向転換

同時手術は嬉しいのですが、それが本当に治療上適切な判断なのかが気になります。

聞くと、カンファレンスで以下経緯があったようです。

  • 肺動脈再閉塞への懸念提起
    • 今回の手術で単にグレン循環を再建しただけでは、閉塞前と同じ状況が再現されるのではないか?
    • つまり、また前回と同様の閉塞が起こるリスクがあるのではないか?

循環器科からの提起に対し、外科がこれを否定できなかったようです。そりゃそうです。論理的に否定できるなら、原因はとっくに解明できているはずで、こんな状況になっていないわけですから。

あっくんの左肺動脈に起こったあの謎の閉塞事件は、福岡市立こども病院を持ってしてもまさに悪魔の出来事で、相当トラウマなのでしょう。

  • フォンタン術の同時化によるリスクヘッジ
    • 前提として、あっくんの肺動脈および肺の血管床は、フォンタン循環に耐えうるだけの十分な成長を遂げている。
    • その上で、仮に肺動脈の再度閉塞が起こった場合かつそれに気がつくことができなかった場合でも、フォンタン術まで完了していれば受動的に片肺フォンタン循環に切り替わり、無理な緊急再手術をする必要性が低減できる可能性がある。
    • つまり、フォンタン術の同時実施はフェールセーフの観点からも妥当性を有する。

ほう、なるほど。

  • フォンタン術による循環系の変化
    • 次に、前回と異なる循環系にすることで血流量に変化が起き、以前閉塞した左肺動脈側の血流量が増大する可能性がある。
    • 推定原因の一つとして、あっくんの右肺動脈の血管は直径も抵抗値も優秀過ぎたため、左右肺動脈の血管抵抗血に著しい不均衡が生じたことが挙げられる。
    • つまり、左肺動脈側への血流量が低下したことで血流速も低減し、血栓が発生→結果として閉塞したという可能性も否定できない。
    • そこで、下大静脈を肺動脈に直結させることで、上大静脈のみを直結させたグレン循環のときとは異なる、いわば血流の淀みが右肺動脈側に発生することで、左肺動脈側の抵抗値が上昇→左右肺動脈間の不均衡が解消されるのではないか?という仮説を立てた。

さぁ、如何でしょう。論理的には分かりますがね。

そして、通常のフォンタン術と同様に、うっ血のリスクが判明した場合には、テイクダウンで穴あきフォンタンにせざるを得ないリスクは背負うことになる。あっくんの場合は、それが片肺になる可能性もあるという状況です。

その場合、チアノーゼが解消されないので、生涯に渡って酸素を要することになってしまいます。

f:id:MoriKen254:20190228162536p:plain

あっくん:なにやら複雑ですな!

おとーちゃん:それだけあなたはすごい手術をしているということですよ、あっくん ^^;


思考実験の域を出ていない

とは言え、いささか思考実験の域を出ておらず、机上の空論的な論旨展開ですよね。これを裏付けるための論文なんて無いんです。それどころか、なんら断片的なデータもなければ実績も皆無なんです。

それに、今までの説明ではこんな仮説、話の節にも出たことすら無かったんです。どちらかというと、

「グレンに戻すだけでもリスクがあるのに、フォンタンの同時にやるというのはリスクを増大させるから、同時術は否定的です」

と言われていたくらいなんですから。

それなのに、入院中の術前のカンファレンスで、突然手のひらを返したように同時術の話が出てきたわけです。家族感情的には同時術と聞いて嬉しい気持ちがありますよ。ただ、客観的な視点、特にアカデミックな立場からこの状況を観察すれば「なんじゃそりゃ?出直してこい!」となりますよね笑。

かの思考実験の天才・アインシュタインですら、実証には理論数学者の手を借り、様々に実験を行ったわけですが、あっくんの命がかかっている手術については実験的に色々試すなんて言語道断。リスクとリターンのバランスをリアルタイムに考えながら、最適な戦略・戦術を取っていくしかありません。

それでも信じてお任せする

もちろん、術前説明の段階で、主治医には色々質問させて頂きましたが、結論は「やってみないと分からない」この一点に尽きます。医師の立場にたてば、グレン循環における肺動脈閉塞事件のトラウマがあるだろうし、そもそも実績も無いのも事実なので、下手なことは言えないのも分かります。分かっているんです。

家族感情的には複雑です。インフォームド・コンセントの段階で起こりうることを聞いて、様々なリスクに対してそういうことが起こりうるのかと納得するしかありません。

頭では分かっていても、もうこの仮説を信じて行くしか無いんです。

最後は医師の誠実さ

最後は、主治医の誠実さです。その判断基準は、普段の外来や、入院中の経過報告、そして術前説明など、会話の節々から読み取っていきます。

例えばこちらから、

  • 「ん?そこはグレンであれフォンタンであれ共通のリスクでは?フォンタン同時術の方がそのリスクが低くなると見込めているのか?」
  • 「論理的には分かるが、結局不均衡は解消されないのでは?今回の手術でそれが緩和されることが期待できるのか?」
  • 「フェールセーフ的な措置には納得できるが、両肺フォンタン循環の成立以外では酸素の離脱ができないのではないか?」
  • 「今回再建に使用する人工血管を交換するために、将来的に再度開胸手術が必要になるのでは?」

など、素人丸出しの、ぶっちゃけ答えられないだろうなぁという質問や、ネガティブな回答をセざるを得ない質問に対して、

  • 「正直分からない。」
  • 「酸素離脱ができないケースは排除できない。」
  • 「今後複数回の開胸手術が必要になるが、その回数は分からない。」

等、患者にとって不都合な事実でも真摯に回答してくれるかどうかが、私は大事にしており、実際ちゃんと回答してもらっていると感じています。

ここでもし、医師と患者の間に生じる情報の非対称性や、知的レベルの格差を悪用し、故意にお茶を濁したような説明をしてサインをさせるようなら、私は納得しません。(過失なら大目に見る傾向はありますが、故意は許しません。)

その点、ここの医師は大抵(←全員とは言わない笑)しっかりと、かつテンポ良く(←ココ大事)回答をしてくれます。だから、私は安心して治療を任せることができるんです。この病院には本当に優秀な医師が密集していると思います。

そして、医師たちの経験とセンスを信じ、同意書にサインをさせていただきました。

手術は現在進行系

というわけで、朝8時30分にオペ室に行ったきりにあっくんは、まだ戻ってきておりません。手術はまだまだ掛かりそうです。

無事手術を終え、元気な笑顔を見せてほしい。またベタベタ遊ぼうね。そして、酸素が離脱できて、ある程度自由に行動できる人生を歩んでくれることを祈っているよ、あっくん。

f:id:MoriKen254:20190228162642j:plain

あっくん:みんな、また遊ぼーぜ!待ってろよ!

おとーちゃん:頼むぞー!本当、お主の力には期待しているからな!絶対に帰ってくるんだぞ、あっくん!