あっくんと生きる

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「左心低形成症候群」と診断された息子の闘病記+親の感情

【情報共有】ドナルド・マクドナルド・ハウス ふくおか パンフレット

あっくんの治療が始まってからというもの、想像よりも大変なことばかりに遭遇し続ける日々です。

そんな治療生活にあたり、実にたくさんの方や設備のお世話になっております。

その一つとして外せないのが、ドナルド・マクドナルド・ハウス ふくおか(以下、ハウス)です。

その理念や施設については認知が不足しているということを、以前ハウスのマネージャーがおっしゃっていましたので、微力ながらご協力できないかとは常々思っておりました。

その一環として、ハウスの情報を発信していこうと思います。今回は、ハウスのパンフレットの内容をご紹介します。

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・出典:ドナルド・マクドナルド・ハウス ふくおか パンフレット


www.dmhcj.or.jp

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あっくんが取材を受けたときの情報

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パンフレット画像

ここでは、パンフレットの画像をそのまま引用転載します。

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・出典:ドナルド・マクドナルド・ハウス ふくおか パンフレット


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・出典:ドナルド・マクドナルド・ハウス ふくおか パンフレット


パンフレット内容

以下、パンレットの記載内容をテキストに起こして引用致します。

ハウスの歴史

 フィラデルフィアでアメリ力ンフットポール選手として活躍していたフレッド・ヒルの愛娘 (3歳)が白血病にかかり、入院することになりました。娘の入院中、彼がそこで目にしたものは、狭い病室で子どもの傍らに折り重なるようにして寝ている母親、やむなく病院内の自動販売機で食事を済ませている家族の姿でした。

 彼もまた入院先の病院が自宅から遠く離れていたため、精神的にもそして経済的にも苦痛を感じていました。そこで彼は病院近くに家族が少しでも安らげる滞在施設ができないものかと考え、近くにあるマクドナルドの庖舗オーナー、病院の医師、そしてフットポールチームの協力を得て募金活動が進められたのです。

そして1974年、フィラデルフィア新聞社主が提供してくれた家屋を改造し、世界初の「ドナルド・マクドナルド・ハウス」が誕生したのです。彼らの切実な願いを数多くの人たちがわかち合い、3年後にはシカゴに第2号ハウスが誕生しました。やがてこの活動が世界的な広がりを見せ、今では世界に300以上の「ドナルド・マクドナルド・ハウス」が建てられ、年々増え続けています。

・出典:ドナルド・マクドナルド・ハウス ふくおか パンフレット

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・出典:Ronald McDonald House Philadelphia


ハウスとは…

 自宅から遠方の病院に入院している子どもと、その付き添い家族が利用できる滞在施設です。ハウスのコンセプトは"Homeaway from home"-我が家のようにくつろげる第二の家。世界各国にあるすべてのハウスが、このコンセプトをベースに運営されています。

 ふくおかハウスは、福岡市立こども病院の敷地内に建てられ、 16家族が滞在することができます。キッチン、リビンク、ダイニング、そしてプレイエリアが備わった大きな家です。

f:id:MoriKen254:20180531224616j:plain ・出典:ドナルド・マクドナルド・ハウス ふくおか パンフレット


ハウスを支えるボランティア

 ハウスの運営は地域のボランティアによって支えられています。身の回りの掃除や食事の支度は利用者にしていただきますが、利用家族がゆっくりとくつろげるような家づくりのサポートをしているのはボランティアです。

 さらにハウスの付帯施設のほとんどは、趣旨に賛同した企業から提供されています。また運営費は個人や企業からの募金や寄付によってまかなわれています。ハウスは、多くの方の協力なしでは、成り立たないのです。

f:id:MoriKen254:20180531224131j:plain ・出典:ドナルド・マクドナルド・ハウス ふくおか パンフレット


ボランティアの募集

ボランティアに参加してみませんか。
興味のある方は、下記までお問い合わせ下さい。
また、ハウスへの寄付などについては、ハウスマネージャーまでご連絡下さい。見学もできます。


アクセス等

  • 場所:〒813-0017
        福岡市東区香椎照葉5-1-2
        Tel. 092-692-2031
        Fax. 092-692-9087
        Email. dmh-fukuoka@seagreen.ocn.ne.jp
  • 施設:ベッドルーム16室
        キッチン
        ダイニング
        リビングルーム
        多目的室(図書館)
        ランドリー
        プレイエリア
  • 利用料金:1日 1,000円/人
  • お申し込み:Tel. 092-692-2031
           利用ご希望の方は、事前にハウスにお申し付け下さい。
  • ホームページhttp://www.dmhcj.or.jp/

www.dmhcj.or.jp

パンフレット同封 利用に関するご案内

パンフレットに同封されている別紙の利用案内を引用掲載します。語感の調整や誤字脱字等について、若干のリライトをしています。

はじめに

  • ドナルド・マクドナルド・ハウスは営利目的の宿泊施設(ホテル)ではなく、多くの方からのご寄付やボランティアの善意と協力で運営しています。16家族が滞在する大きな『家』ですので、ご利用にあたりましては下記の案内をよくお読み下さい。

滞在条件について

  • ドナルド・マクドナルド・ハウス ふくおかは、福岡市立こども病院に入院または通院している20歳未満の患者さんと付き添いご家族が利用する滞在施設です。

滞在期間について

  • 限られた部屋を公平に利用していただくため、滞在は最大で2週間(14泊)です。
  • 入院期間が長期に及ぶ場合は、2周間の利用後、一旦チェックアウトしていただき、1週間あけてから再利用が可能です。この場合の滞在は2週間(14日間)です。
  • 再利用については、この繰り返しで利用することができます。
  • 外来受診は、2泊まで滞在可能です。

利用料金について

  • 1人1日1,000円
  • 別途理念使用料173円、合計1,173円です。
  • 寝具・リネン類の持ち込みは出来ません。
  • ;但し、患者さんは無料です。
  • 駐車場をご利用の場合は1日300円いただきます。

その他

  • ベッドルームは個室で、ツインルーム(バス・トイレ付き)です。テレビは共有スペースでのご利用となります。
  • エキストラベッド、ベビーベッドも用意しております。必要な場合には、お申し込み時にお知らせください。
  • チェックアウトの際は、ご利用になったベッドルームをご家族の責任の下、清掃していただきます。
  • レストラン等の施設及びハウスからの食事の提供はありません。共有キッチンをご自由にお使い下さい。
  • ハウスに託児所はありません。またハウス内でのお子さんの事故等には一切責任を負えませんので、ご家族の責任の下、お連れ下さい。
  • 下記のものは用意しておりません。ご持参下さい。
     ・パジャマ ・洗面用具 ・タオル

チェックイン・アウト時間

  • チェックイン/14時~19時 (平日)
              14時~17時 (土日祝)
  • チェックアウト/9時~12時
    ※チェックイン手続きの際は、ハウスの説明をさせていただきますので、30分程お時間がかかります。
    ※チェックイン後、ハウスへの出入りは24時間可能です。

申し込みについて

  • 電話または来訪し、お申込みをお願いします。FAXやメールでのお申込みはできません。
  • 利用確定は入院の際は7日前、外来の際は3日前の時点で決定いたします。
  • 先着順ではなく、患者さんの緊急度、治療レベルの重症度、お住まいの地域によって優先順位の高い方からご案内いたします。

連絡先

  • ご不明な点は、下記までご遠慮なくお問い合わせください。
  • 電話/092-692-2031 平日受付時間 9時~20時
               土日祝祭日  9時~18時

あまりに余談すぎる余談

一号ハウスはアメリカのフィリーにあるって!

なんと、本家はフィリーにあるらしい!は?だから何っ?て感じですよね ^^;

完全に個人的な話で、自分は学生の頃に一年ほどペンシルベニアに住んでいたので、フィリーと聞くとちょっと親しみを感じます。

し!か!も!

かの名門アイビー・リーグの1校、ペンシルベニア大学(通称: UPenn)と目と鼻の先にあるではありませんか!

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・出典: Google マップ


※ 私のことを知っている人向けのフォロー。私がいたのは州立大学(通称: PennState)の方でして ^^; すげー紛らわしくてしょっちゅう間違われます笑。てかそもそも、私ごときの人間ではアイビー・リーグなんて行けませんからね!

当時の自分が、将来病児を授かることになると知っていたら、お子ちゃまミーハー的にUPennを見学しに行ったときに、ハウスにも寄っていたのになー。千載一遇のチャンスを逃してしまったな。トホホ…。

本家では「ロナルド・マクドナルド・ハウス」らしい

本家では「Ronald McDonald House」と言う名称であり、「RMH」という略称で表記されています。

え?もしかして、ドナルドじゃないの?と思ってマクドナルドの本家のホームページを見てみたのですが…。

なんと!あのマックの名物ピエロキャラの名前、Ronaldらしい!

Ronald McDonald – The primary icon of McDonald's. He is a clown with red hair and a big red smile who wears on a yellow suit and red shoes. He also wears a red and white striped shirt underneath with yellow gloves ...

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・出典:mcdonalds.wikia.com


この描写…。本家キャラクター一覧の中で当てはまるのは…?

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ロナルドさん:ん?何ですか?


そうだよ!間違いないよ!絶対ヤツ以外にありえないじゃないか!

なんてこった!まじで知らなかった!こんなことを見逃すだなんて、俺は一体アメリカにまで行って、何を学んでいたんだー!ウオー!

なんで「ロナルド」が「ドナルド」になったの?

こういう責任を取る必要のない面白い情報は、Wikipediaさんにお尋ねするに限ります笑。

「ドナルド・マクドナルド」-本名・正式名称(抜粋)

このマスコットの本名(正式名称)はロナルド・マクドナルドであるが、日本ではドナルド・マクドナルドとなっている。これは、マクドナルドが初めて日本に進出した際、藤田田が日本人にとって「ロナルド」という単語は発音しにくく「ドナルド」の方が発音しやすいという意見を採用したためである。
・出典:ドナルド・マクドナルド - Wikipedia

マジか、そんな理由だったのか笑。

ちなみに「マクドナルド」の発音の経緯まで

どうも、創業者の藤田田氏は、日本人にとって発しやすい音にこだわりがあったようですね。

「藤田田」ー人物(抜粋)

日本語の研究が趣味で、日本マクドナルドを創業する際も、「McDonald's」を、正しい発音である『マク-ダーナルズ、または、マク-ダーヌルズ』とせずにアメリカ本社の反対を押し切り「日本語的に馴染みやすい3・3の韻になるよう」に『マクド-ナルド』とするなど、本業にもその成果を反映させた。
・出典:藤田田 - Wikipedia

これ、渡米あるあるでしょう笑。「マクドナルド」が全く通用しないのですから、これは一大事ですよ!

私も例に漏れず(?)、一人寮の個室で「マックダーヌルズ」をひたすら練習していた夜があったことが、昨日のことのように思い出されます(いや、そこまでではないか笑)。

私としても日本の文化を伝達すべく(どんな文化だ笑)、現地の人にも一生懸命和琉発音を教えたことがありましたが、最後まで習得してもらえませんでした。シクシク。

とにもかくにも、日本人に優しくしたがゆえに、このグローバル社会で日本人が外国で苦労することになろうとは、藤田田氏も予想していなかったことでしょう(そんなに大げさな話ではありません)。

おわりに

ハウスのことをご紹介したくてエントリを書いていたのに、最後の方はただの私の回顧録になるというカオスっぷりに、私自身が戸惑っております。

まぁ、たまにはこういう展開も良いじゃないかなと思うことにしましょう(これでいいのだろうか…)。

とにかく、今回のブログで伝えたかったことは、

ハウスは多くの方の善意で成立しているんだよ!

これにより実際にたくさんの病児家族が救われているんだよ!


ということなんです!ということを強調しておいて、今回はこれにてお開きです ^^

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あっくん:まったく、何が貢献ですか。後半とかマジどうでもいい話ばっかりじゃないですか!

おとーちゃん:なんか今回は私のツボに入るような情報ばかり出てきて、気になって仕方なくなってしまったんですよ汗。いやほら、本家のブログじゃこんな余談ネタ書くわけにいかないでしょ?個人ブログならではの強みなんですよ!とか屁理屈言うおとーちゃんみたいな大人になっちゃいけないよ、あっくん。


あっくん、手術は免れましたが…

励ましのお言葉等を下さった皆様、誠にありがとうございます。取り急ぎお礼の返答とすること、ご容赦頂けましたら幸いです。

さて、前回のエントリで、緊急手術が必要になるのではないか?というお話をしました。

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この手術の件は、見送りとなりました。

その経緯を、取り急ぎ文字で説明します。余裕ができたら絵も追加します。

なぜ見送りとなったか?

実は、閉塞したシャントが形成された箇所は、色々試行錯誤した結果、結構いい感じの場所を見つけて決めたらしいんです。

またお腹を開けて手術をしたとしても、それ以上に流れの良い場所を見つけられる見込みは低いとのことです。

また歯切れが悪いのですが、どういうことかと言うと、

わざわざ侵襲の大きいオペをしたところで、結局また詰まるのが目に見えている。

となると、オペによって見込まれるでっかいリスクやダメージに対して、得られる効果が全く釣り合わないので、患者の予後を考えても見送るのが妥当。


というのが、外科医の判断となったようです。

じゃあ、どうするのか?

まずは薬物療法

前回もお話した通り、引き続き、内科的処置を継続することになります。

どんな薬を入れるの?

血栓を溶解する効果を持つウロキナーゼや、抗凝固薬であるヘパリンを点滴投与します。

しかし、既に血栓ができて数日経ったと思われる以上、あまり効果は期待できません。

なんであまり効果が見込めないの?

それに、もともと抗血小板剤であるアスピリンや抗凝固薬であるワーファリンを経口投与しており、点滴をしなくてもそれなりに血液の粘度は低い水準にあるのです。

だから、上記の点滴を追加投与することは、実を言うとあまりお行儀の良いことではないようです。なぜなら、術直後はただでさえ吻合部から出血しやすい状態なのに、それを悪化させる方向に作用してしまうからです。

とは言え、内科としては何もしないわけには行かない。というわけで、術部への影響をソコソコに抑えられる程度に、じんわり点滴をいれないといけない。

という事情も相まって、あんまり期待できそうにないのです。

現に、ウロキナーゼは2日間投与して、既に離脱されています。

やっぱりカテーテル

頼みの綱

さぁ、外科は手術をしないと言います。内科は投薬は効果が期待できないと言います。となると、頼みの綱はやはりカテーテルです。

閉塞したシャントにバルーンを留置するんだそうです。

カテも結構難しいらしい

とは言え、今回形成したシャントの位置は、カテーテルの侵入が非常に難しいとのことです。

有効性の高い従来手法である冠動脈に対するカテーテル治療法を応用することが検討されるようですが、これに種々のテクニックを施したとしても、やっぱり難しいと言わざるを得ないようです。

相当経験があると言われる主治医でも、難しそうな顔をしていましたので。

タイミングも難しい

カテをいつやるか、という問題もあります。

内科としては、入院しているうちにカテを施してあげたいという思いがあるようです。その方が、再入院の負担も軽減できますし、閉塞が起きてから比較的日が浅いというのもあると思います。

一方、外科としてはこれを否定します。まだ術後の日数が浅いので、シャント吻合部の連結が不完全であると考えており、カテによって吻合部の剥離等が起こるリスクを懸念しています。

だから、外科としては一旦退院させて体制を整えてからカテをしてくれという主張のようです。

結論が出るには、もう少し議論を重ねる必要があるとのことです。

なぜシャントが閉塞したのか?

真因は側副血行路

やはり、左肺動脈に伸びた側副血行路からの血流がそれなりに多く流れているために、シャントからの血液が途絶えてしまったと考えるのが妥当とのことでした。

打開策は?

側副血行路を遮断することができればそれに越したことはありません。

内胸動脈からの側副血行路等、ある程度の太さがある血管については、カテーテルによるコイル詰めである程度詰められるようです。

しかし、それ以外の細かいウジャウジャした血管を効果的に遮断する手段は確立されていないようです。

それに過去の経験上、太い血管経由の側副血行路を詰めたところで、肺動脈フローの改善はあまり見込めないようなのです。側副血行路全体の血流の中でも、ウジャウジャ血管が占める血流はそれなりに高い割合である確率が高いようで、リスクの割に効果が薄いという例のあれの状態です。

じゃあ外科的な手法で詰められないのかと聞いたのですが、やっぱりそれも難しいとのことです。

積んでいる

もうお気づきですよね。

ほぼ積んでいるんです


だってそうでしょう?

再手術はすべきではないよ。

薬による血栓除去は期待できないよ。

シャントのバールンはやってみるけどマジ激ムズだよ。

側副血行路のコイル詰めの効果も見込めなそうだよ。


ここまで来ると、いわゆる純粋なフォンタン循環を期待するのは、少々酷な要求かもしれないわけですね。

HLHSの中でも、検査結果が極めて良好にも関わらず、こういう方向に触れるのは非常に稀というか、過去の症例からはそうそう想定しにくい状況だったようです。

あっくん、君のこの症例が、未来の赤ちゃんを救うかもしれないな!でかした!

というジョークはこの辺して。

まぁとは言えですよ、積みつつある中であっても、策が無いわけではないのです!まだまだ諦めるのは早いのです!!!

やれることがあるんですから、やりきるまで前進するのみなのだ!

今後の方針は?

おそらく、今後の濃厚なのは次の3択。

1. 右肺動脈のみのグレン循環

2. 穴あきフォンタン循環

3. 片肺フォンタン循環


とりあえず、現状でヒアリングできたメリット・デメリットを挙げてみます。

1. 右肺動脈のみのグレン循環

最も妥協的な選択肢です。

低サチュレーション状態(チアノーゼ)が改善されないことが理由で、腎臓に悪影響が出る可能性があったり、運動制限が必要になるリスクがあるとのことです。

2. 穴あきフォンタン循環

下大静脈を右肺動脈に直結される手術を行います。

その上で、下大静脈から左肺動脈に対してシャントを形成する方針かと思います。これで、多少なりとも左肺動脈のレスキューを試みるとうものです。

ただ、左肺動脈は細いままですし、そもそも大動脈よりも血圧の低い下大静脈からのシャントでは、結局そこも閉塞するリスクが高そうな予感がしますし、構造の制約上この形が本当に妥当なのか、素人の私にはよく分かりません。

仮にシャントで左肺動脈へのフローを確保できたとしても、この循環ではチアノーゼは回避できません。

せっかくフォンタン手術をしたのにチアノーゼが回避できないのであれば、グレン循環を継続することに対して十分なメリットがないとこの方策を取るわけには行きません。

その上で、純粋なフォンタン循環が抱える最大のリスク、うっ血まで抱えることになると考えられます。

わざわざ手術してダメージを与えて、ゴチャゴチャ血管をいじって構造を複雑にしたにもかかわらず、チアノーゼは改善できないままうっ血のリスクを追加で抱えさせることのメリットが、現状の私のヒアリング結果からは判断できません。

この辺りは、次回主治医にヒアリングします。

3. 片肺フォンタン循環

2と同様、下大静脈を右肺動脈に直結される手術を行います。

この方策では左肺動脈へのシャントは無しです。よって、チアノーゼは改善されます。これが最大の魅力で、チアノーゼが改善されれば酸素が不要になる見込みがあるわけです。

ただし、両肺フォンタンですら最大の懸念事項であるうっ血のリスクがより強く顕在化してしまいます。

現在うじゅうじゃ伸びている側副血行路くんがうまく作用してうっ血を抑えられる可能性も、不確実ながらあるのかなー。そうなると今度はチアノーゼが回避できない…。

もうね、分岐が増えてきたから、まじめにフローチャート改版したらやべーことになりそう笑。

チアノーゼ or うっ血のトレードオフ

ここまで来ると察することができると思いますが、チアノーゼのリスクとうっ血のリスク、どちらをどの程度許容するのが良いかを評価することになると考えられます。

とは言え、どうも片肺フォンタンやグレン循環の長期的予後の症例が現段階では不足しており、中々比較検討が難しいようです。

こうなると、後は間接的に得られるデータや、医師のインスピレーション、統計的な有意性を検証できない仮説にまで手を出した上で、ある意味「予想」であっくんの将来を占う必要が出てくるということです。

理系(工学ですが)で生きてきた私としては、なんともこの客観性を欠いてしまうシナリオに対してむず痒い思いを抱くところなのです。

医療ってめっちゃ大変

とは言え、理系だからこそ、医師の抱える苦しい事情も、うっすらですが見えてきます。小児で心疾患、しかも左心低形成症候群(以下、HLHS)とか、世界的に見ても相当サンプル少ないでしょうし、個体による症状のバラツキが大きすぎてフェアな比較をすること自体がめちゃんこ難しそう。

それに、そもそもHLHSの治療方法が確立されたのもここ10~20年程度であり、歴史としては浅いという事情もあるようで、長期的な予後を予測するのも一苦労でしょう。(それより前に生まれていたら、出生後即死亡という不治の病だったのですから、ここまで元気でいてくれていることは、本当にありがたいことなんだと実感しています。)

更に、まともにHLHSを治療できる病院だって世界的に見ても非常に限られているようで。

となるとですよ?

はてはて、こんな劣悪な条件下で、どうやってフェアな条件揃えて、客観性と再現性を担保した有効な治療方法を提案してくのだろうかと考えると、その苦労は計り知れないものがあるのが、容易に想像できます。(仮説検定通すの大変だろうなーとか、余計な心配をしています笑。)

医師とのやりとはバランスが大切そう

まぁ何はともあれ、色々回り道をすることはありますが、本当にここの医師ってすごく尽力してくださっているなぁと言うのが、私の正直な感想です。

主治医とやり取りする際には、(こっそりと笑)発言のロジックに注意してきましたが、ここまで終始一貫して、少なくとも論理的には一切間違ったことは発言していません。質問に対する回答も、変に回り道せずに端的かつ的確なので、いつもストンと腹に落ちます。マジで相当頭のいい人だと思います。

ただ、あまりに論理的に正しすぎる発言をするがゆえに、理路整然かつ淡々とした説明をする側面があるので、感情面で刺激してしまうところはあるかもしれませんね ^^; 幸か不幸か、変人の私としては、逆にいくら人が良くても筋が通っていなかったり、曖昧な発言や嘘・気休めではぐらかされそうだと察すると、事実に基づいたまともな論理武装もできない医師なんて信用できるかー!?キー!っとなるタイプなので、波長が合ってしまうんですが ^^;

理詰めで行くべきところはとことん理詰めで行き、必要に応じて感情に配慮できるようなコミュニケーションが取れるの良いんだろうな、とか思う今日このごろです。これは医師と患者に関わらず、人とのコミュニケーション一般に通じる話だとは思いますが ^^;

おわりに

まぁ、なんか脱線した気もしますが、要は、

確かに手術はなくなったけど、実はポジティブな理由じゃなかったぞい。

でも、今後もカテーテルとか入れ込みながら、引き続き諦めないで頑張るぞい!


的なお話でした ^^;

だからってあっくんのこと見捨てたりしないよ。今君に施せる最善の治療を、お医者さんと一緒に考えていくからね。あっくんも引き続きよろしくね!

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あっくん:お医者さんごっこですか!楽しそうですねー!私も混ぜて下さいよ!私、失敗しないんで!

おとーちゃん:またそれですか。ていうか、ごっこではなくて、ガチのお医者さんが君に付いていてくれているのですよ ^^; いいからちゃんとご飯食べて、今後もしっかり体にお肉つけてくださいね、あっくんよ。


あっくん、またまた手術が増えそうです

あっくん、先日シャント形成術を終えました。

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色々経緯がありましたが、なんとかかんとかここまで来られました。

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手術で1kg近く体重が落ちてしまっていました。

近頃ようやく手術のダメージから回復し、ご飯も食べるようになり、また歩く練習までできるようになったと思っていた…。

そのとき!?

シャント閉塞発見までの経緯

サチュレーションの減少

サチュレーションモニターの値が、70台~80台前半をうろつくようになりました。

サチュレーションは血中酸素飽和度を表し、健常者は100%であるのが通常です。

あっくんのようなグレン循環児だと、80台後半くらいあればいい感じのようです。 術後一般病棟に上がってしばらくは、その80台をキープしていました。

しかし、昨日あたりからこの値がガクッと下がり、70台まで落ち込みました。

まずは病棟の看護師さんに相談したのですが、本人はいたって元気だし、しばらく様子を見ようということに。

一晩経ってもやっぱり低いので、病棟の主治医に相談したところ、これはやはり低いぞということに。

緊急エコー

そんなこんなで心配なので、夜にもかかわらず緊急でエコーをしてもらいました。

すると、先日までよく見えていたシャントが見えにくくなっているとのこと。これで主治医のスイッチが入りました。

緊急CT

さすがにエコーでシャントがここまで見えないのはやっぱり怪しいとのこと。

続いて緊急CTです。翌日の午後に予定していたのですが、エコーでシャントが確認できないことに危機感を覚えた主治医が、急遽CT検査をしてくれました。

もう夜の9時です。

シャント閉塞

このCTが決定打となりました。

なんと、大動脈から左肺動脈に形成したシャントがほぼ完全に閉塞していました。

これが原因で、サチュレーションが減少したと考えられます。

シャント閉塞の原因は?

左肺動脈が細すぎる

やはり、左肺動脈が細すぎて、シャントからの血流が滞ってしまったようです。

シャントは4mmなのですが

とは言え、大動脈という太くて強い血管から、しかも 4mm という、あっくんの月齢にしては極太のシャントです。そんなに簡単に閉塞するものではなく、通常では考えられないレベルの現象とのことです。

側副血行路に邪魔されたかも?

推定原因としては、側副血行路からの血流に邪魔されてしまった可能性があるということ。

うーん、大動脈からの高い圧の血液が遮られる程に異常血管の流れが強いということが本当にありえるのかというのが疑問なのですが、そんなことは主治医も承知で、だから困っているのですが。

医療ってマジ大変。本当、こればっかりは一筋縄では行かないということを、まじまじと痛感しています。

今後の方針

外科医のカンファレンスがまだなのでなんとも言えませんが、現状で考えられる方針をヒアリングしました。変更もありえると思います。

血栓の溶解

まずは内科的処置として、閉塞部の血栓の溶解を試みます。ウロキナーゼというお薬を一晩点滴します。

側副血行路のコイル詰め

もし血栓が取り除ければ、カテーテルによる側副血行路のコイル詰めを行い、シャントのフローの円滑化を試みます。

超緊急シャント再形成術

もし血栓が除去できなければ、めちゃんこ緊急でシャント再形成術が必要です。外科スタッフの空きを調整して、何とか滑り込ませようとか、そういうレベルのお話です。

結構順調という流れで、そろそろ退院できるんじゃね?的な感じだったのでそれは避けたいなーと勝手に個人的に思っているのですが。

主治医と話しているときの雰囲気からは、シャントが思いっきり詰まりまくっているみたいなので、再手術の流れがプンプンします…。

でも、まだいつ手術になるか分かりません。

今日か、明日か、とにかく、必要と判断されれば、そういうスパンで緊急手術が必要です。

また衰弱するのかー

やっとPICU出てきて、最近キャッキャ遊べるようになったのに、また手術ですって。

すでに1kg落ちた体重、また更に落ちちゃうの?またお座りの練習からやり直すの?また食事も練習からじゃーん!

とか、そんな思いもよぎったりよぎらなかったりしますが、この状況ですから、致し方ありません。

もうこうなったら、まだまだやってやるぞー!!!

私達の身の振り

ドナルド・マクドナルド・ハウス終了→ホテル予約

ハウスは今日チェックアウトです。こんなタイミングで!!!

急遽ホテルを予約して、手術に備えます。手術の際は、両親が付き添う必要がありますから。

また会社休むよ

てなわけで、私はまた会社を休みます。

分かっているんです。家族のためです。

とは言えですね、会社にも社会にも貢献できない、この無力感!!!もうね、吹っ切れますね笑。

社会貢献に繋げたい

働く時間を削り、様々な社会福祉士制度、医療技術や制度を多分に活用させていただいており、そのおかけであっくんが生きてくれていること、本当に実感しています。

こうしてまで私達があっくんを守れていることは、決して当たり前のことではないと思っています。

だからこそ、あっくんを守るこの行動を、少しでもこの社会への貢献に繋げたい。

せめて、どこかで同じような悩みを抱えて、辛い思いをしているご家族に対して僅かながらの助けに繋がって欲しい。

そんな願いがあってブログを始めたことを今一度思い出しました。そんなわけなので、今後とも情報発信をしていこうと、今一度思った次第です。

おわりに

病児家族の皆さんは傍から見るととても笑顔で前向きな方が多いのですが、本当のところ、相当、めっちゃ苦しいっていうのは、痛いほど分かりますので。

苦労自慢みたいなことしたくないし、どこか肩身が狭い思いもあり、中々弱音が吐けなかったりするのは、苦しいんですよね。

病児の手当てもらって得をしてズルいと思う人もいるのですが、こういう宿泊施設の利用や、度重なる病院への交通費であっという間に使い切ってしまいますし、そもそもこんなに精神的・肉体的にガリガリ磨り減らされる苦痛は、お金でどうこう解決するのは難しいところもあります。やっぱり、健康が一番です。

そういう、一見病気そのものとは一歩離れたところの辛さって、絶対あると思います。

それでも、なんやかんや言っても、前に進むしかありませんからね。無理しないようにしたいし、休みたいのは山々なんですが、そう言うわけにはいかない状態がずーっと続いているので、そりゃーガタも来ますよね。

まぁ、例に漏れず、我々も前に進むとしましょう。共に生きるぞ!あっくん!

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あっくん:なんすか?やっと一般病棟に戻ったのに、またオペするんすか?早くあの小さいアパートに帰りたいんすけどー!じー(遠い目)。

おとーちゃん:小さいは余計ですが、早く帰りたい気持ちは同じっす。オペかもしれないのは否定できないね。苦労ばっかかけてすまないけど、もうひと踏ん張りしておくれよ。一緒に乗り越えようね、あっくん。


あっくんの左肺動脈閉塞にかかる治療方針

あっくんの左肺動脈閉塞が判明した経緯は前回のエントリで記述しました。

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今回は、これにかかる治療方針について説明します。今後起こりうる事の全体像が分からないと、皆が不安になります。

とうわけで、肺動脈閉塞の判明で、どれほど治療方針に影響が出るかを、なんとなくイメージできるような説明を試みます。

今まで想定していた治療方針

ノーウッド・グレン手術後のあっくんの様態は極めて良好と言われておりましたので、私達の脳内フローは下図のようになっておりました。

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いや、もちろんちょっとした不調ぐらいはあるだろうとは思っていましたよ。

ただ、このまま順調に行けばフォンタン手術だぜヤッホイ!的な感じだったことは否めません。完全に油断をしておりました、はい ^^;

今回の肺動脈閉塞の通知を受け、ちょっとばかりうろたえてしまった部分はありました。

今後想定される治療方針

フローチャートで把握

この度、あっくんの左肺動脈閉塞を受け、方針が(ざっくり)下図のようになりました。

何度か医師と対話を繰り返す中で、ようやくここまで理解が追いつきました汗。

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ざっくりで、想定しうるシナリオは9通りとなりました。左のシナリオほど予後が良いと考えられる(手術回数が少ないため)ものです。

どうです?これでも細かいところには目をつむっているのですが、肺動脈が詰まっちゃったってだけで、こんだけ状況が複雑になるんです汗。

肺動脈っていうのは、それくらいやばい存在だったんですね。トホホ…。

層別で把握

まず、考慮すべき項目は大別して下記の4つです。すべての項目がYESとなれば、予後が良いです。どの項目でNOになるかによって、必要となる手術の回数や、根治後の循環系、それに伴うリスクの度合いが変わってきます。

検討1. 大動脈から肺動脈へのシャントを形成する必要が不要か?
  • シャントが不要なら手術回数が減る。
  • シャントが不要ということは、そもそもシャントが不要なほど肺動脈が成熟しているということである。
検討2. 肺動脈再建をフォンタン手術と同時にできるか?
  • 2手術を同時にできるなら当然体力の消耗が抑えられる 。
検討3. 自己組織で肺動脈を再建できるか?
  • 人工血管になってしまうと身体の成熟に伴い人工血管の交換が必要。
検討4. 完成形が両肺フォンタン循環か?
  • 左肺動脈が再建できれば、根治の理想形である両肺フォンタンに到達可能。
  • 左肺動脈が再建できなければ、根治の形態は片肺フォンタンとなる。
  • 片肺フォンタンだと、両肺フォンタンに比べて他臓器不全のリスクが高くなってしまう。

真面目に分けようとすると4次元のマトリックスを構成しなければなりませんが、それでは可視化ができません汗。

そこで、重複項目が生じることを承知の上で、2次元のマトリックスで層別を試みた表を示します。パッと見て全体像が掴める!と思っているのは、私だけかもしれませんが…。何も無いよりマシです!

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医師とインフォームド・コンセントをするには、ざっくりこのパターンを念頭に入れておかないと、まず話が噛み合いません。私は複数回、直接医師とやりとりできているからなんとなくこれが頭に入っていますが、これを家族に説明しようと思うとキツイです笑。

というわけで、本エントリで図説を試みている次第です。

シナリオ概要

こうして抽出したシナリオID(フローチャート、層別の両者に記載しています)、およびシナリオごとにどのような処置を行うことになるのかを図を用いて説明します。

カッコ内のYES/NOは、前述した考慮すべき項目に対する回答と対応します。YESが多いほど好条件傾向です。

ただし、項目によって重みが異なるので、単純にYESの数だけで評価できません。だから、傾向という単語を使いました。

更に、シナリオによってそもそもYES/NO判定が不要と思われる項目もありますので、それについては-(ハイフン)で表記します。

No.1 シナリオ:[A1-C1]
  • 条件
大動脈→肺動脈
シャント
肺動脈再建+フォンタン
同時術
肺動脈再建の組織 循環
不要 (YES) 可 (YES) 自己組織 (YES) フォンタン (YES)
  • 手術(少なくとももう1回で根治 ※根治については後述)  
    ① 左肺動脈再建(自己組織)+フォンタン同時術

  • 手術フローの図説
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No.2 シナリオ:[A2-C1]
  • 条件
大動脈→肺動脈
シャント
肺動脈再建+フォンタン
同時術
肺動脈再建の組織 循環
不要 (YES) 可 (YES) 人工血管 (No) フォンタン (YES)
  • 手術(少なくとももう1回で根治)  
    ① 左肺動脈再建(人工血管)+フォンタン同時術

  • 手術フローの図説
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No.3 シナリオ:[B1-C1]
  • 条件
大動脈→肺動脈
シャント
肺動脈再建+フォンタン
同時術
肺動脈再建の組織 循環
不要 (YES) 不可 (NO) 自己組織 (YES) フォンタン (YES)
  • 手術  
    ① 左肺動脈再建術(自己組織)  
    ② フォンタン手術

  • 手術フローの図説
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No.4 シナリオ:[B2-C1]
  • 条件
大動脈→肺動脈
シャント
肺動脈再建+フォンタン
同時術
肺動脈再建の組織 循環
不要 (YES) 不可 (NO) 人工血管 (NO) フォンタン (YES)
  • 手術  
    ① 左肺動脈再建術(人工血管)  
    ② フォンタン手術

  • 手術フローの図説
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No.5 シナリオ:[A1-D1]
  • 条件
大動脈→肺動脈
シャント
肺動脈再建+フォンタン
同時術
肺動脈再建の組織 循環
必要 (NO) 可 (YES) 自己組織 (YES) フォンタン (YES)
  • 手術  
    ① 大動脈→肺動脈シャント術  
    ② 左肺動脈再建(自己組織)+フォンタン同時術

  • 手術フローの図説
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No.6 シナリオ:[A2-D1]
  • 条件
大動脈→肺動脈
シャント
肺動脈再建+フォンタン
同時術
肺動脈再建の組織 循環
必要 (NO) 可 (YES) 人工血管 (NO) フォンタン (YES)
  • 手術  
    ① 大動脈→肺動脈シャント術  
    ② 左肺動脈再建(人工血管)+フォンタン同時術

  • 手術フローの図説
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No.7 シナリオ:[B1-D1]
  • 条件
大動脈→肺動脈
シャント
肺動脈再建+フォンタン
同時術
肺動脈再建の組織 循環
必要 (NO) 不可 (NO) 自己組織 (YES) フォンタン (YES)
  • 手術  
    ① 大動脈→肺動脈シャント術  
    ② 左肺動脈再建(自己組織)  
    ③ フォンタン同時術

  • 手術フローの図説
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No.8 シナリオ:[B2-D1]
  • 条件
大動脈→肺動脈
シャント
肺動脈再建+フォンタン
同時術
肺動脈再建の組織 循環
必要 (NO) 不可 (NO) 人工血管 (NO) フォンタン (YES)
  • 手術  
    ① 大動脈→肺動脈シャント術  
    ② 左肺動脈再建(人工血管)  
    ③ フォンタン同時術

  • 手術フローの図説
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No.9 シナリオ:[B2-D1]
  • 条件
大動脈→肺動脈
シャント
肺動脈再建+フォンタン
同時術
肺動脈再建の組織 循環
必要 (NO) 不可 (NO) 片肺フォンタン (NO)
  • 手術  
    ① 大動脈→肺動脈シャント術  
    ② 片肺フォンタン同時術

  • 手術フローの図説
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あっくんは今どの段階にいるのか?

先日行った緊急手術では、最初の分岐を評価する段階にありました。

そこで「シャント不要」となればバンザイだったのですが、実は左肺動脈はかなり細くなってしまっていたようです。

手術がどんどん増える

よって、「シャントは必要」となり、シナリオ No.1, No.2, No.3, No.4 は棄却されました。つまり、カテ評価の段階で追加されることが決まった肺動脈形成をする前段階として、更に姑息手術をもう1つ追加されているのです。つまり、少なくとも合計2回の手術が追加されたということです。

今回は、その2つ追加された手術のうちの1つの姑息手術が成功した、という位置づけなのです。したがって、成功とは言ってもなんとなく±ゼロ?と感じてしまう部分はあるかもしれません。

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成功は成功!

とは言え、成功は成功!まだチャンスがあるということです!

少しでも前進したことは、あっくんにとってはプラスなのです!三歩進んで二歩下がったっていいんです。七転び八起きで、最後まで付き合いますよ。

だって、あっくんが生まれるずっと前に、そんな決意はとっくに済ませているのですから。

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補足:根治とは

説明上「根治」という単語を使用しましたが、少なくともあっくんの病気に関しては、これは心臓病が完全に治癒されることを指すものではありません。

左心低形成症候群の場合、フォンタン手術が根治手術となりますが、これはあくまでチアノーゼのない状態に達することが大目標となっております。この代償として右心系の機能を生贄に捧げることになるので、「単心室」となることが絶対に避けられません。

つまり、最も理想的にことが進んで「根治」したとしても、慢性疾患を抱えた身体障害者として生きていくことが確定しています。あとは、この慢性疾患の程度をどの程度まで抑えることができるか、あるいは「フォンタン循環」という特殊な循環系統故に誘発される他臓器に発しうる障害をいかに抑えることができるかという問題とは、今後も向き合う必要があります。

もちろんフォンタン手術ができることに越したことはありませんが、できたから完全勝利!もう病気とはおさらばさ!という訳にはいかないのです。

そういう意味では、少なくともあっくんの治療については、今手持ちのカードを使い尽くして最善の状態に至ることを「根治」と指しています。

とは言え、どうも紛らわしく誤解を招きやすい表現なので、医療スタッフ以外との会話では使用は避けるようにしています。

おわりに

そんなこんなで、ごちゃごちゃ書いてしまいましたが、これがあっくんの今後の治療方針です(←こんなんでいいのか ^^;)。

まぁ、色々あるけど、多分大丈夫だよね。いつも心配になるけど、結局元気になって帰ってきてくれるもんね。それだけで嬉しいよ。

また一緒に男同士でワイワイ・イチャイチャ遊ぼうな(←やっぱり変態か笑)。

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あっくん:なんかゴチャゴチャ言ってますけど、なるようになるんだからあんまり難しく考えないでくださいよ!私、失敗しないんで!

おとーちゃん:それもそうですね ^^; あなたの頑張りを信じて、もう少し気楽にいってみましょうかね ^^


あっくんの左肺動脈閉塞が判明した経緯

近頃、本ブログではあっくんの左肺動脈閉塞とその手術について何度か言及してきました。

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今回の肺動脈閉塞に伴う手術については、スパッと説明しにくい部分もあり、家族も皆不安になっています。 人の不安というものは、何がどうなっているか、今後どうなっていくのかがよく分からないときに助長されます。

おそらく読者の皆様にもいまいちよく伝わっていないと思います。これはひとえに私が他者に伝わるような記事を書いていないからだと認識しています。 今回は、きちんと順序立てて説明をします。

そこで、今回の肺動脈閉塞の経緯を示した上で、今後起こりうることの全体像と現在のあっくん位置づけについて、図説を試みます。 これで家族の見えない不安が少しでも改善されるのが一番の願いです。

そして、同じような状況におかれた家族にとって少しでも参考となる情報を提供できれば幸いです。

まず本エントリでは、経緯について述べます

これを受けた治療方針については、以下のエントリで説明しています。

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中間カテーテル評価について

2018年2月、昨年のノーウッド・グレン手術入院から退院してちょうど1年ということで、中間カテーテル評価を行いました。

そこで、左肺動脈の閉塞が初めて確認されました。

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おさらい

あっくんは、左心低形成症候群持ちで、ノーウッド・グレン手術まで完了した状態です。激ムズなやつです。

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詳細は下記エントリをご参照ください。

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今まで気が付かなかったのか?

血液検査の結果が全て良好だったことが裏目に

毎月外来時に血液検査を実施しましたが、特に異常は確認されませんでした。これが裏目に出てしまったのです。

心不全の度合いを示すBNP、右上大静脈の血圧も良さげだったとのこと。 BNPが多少上昇したときもあったようですが、左心低形成症候群持ちにしてはずいぶん良い値でした。何度も言いますが、これが裏目に出てしまったのです。

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グレン循環が優秀過ぎて、計測可能なパラメータに異常が出なかったのでしょう。 異常が出ないから追加検査を行おうというきっかけもつかめなかったのです。

エコーでは左肺動脈の観察が難しい

ノーウッド手術とグレン手術は、左心低形成症候群の子が生き残るために必要な手術なのですが、メンテの観点からは非常に相性が悪いようです。

まず、ノーウッド手術で形成した大動脈は、元々肺動脈だった太い血管と大動脈弓をいい感じにつなげるために、かなり複雑な吻合を行っているようです。 そうして出来上がった大動脈というのは、どうしてもある程度太くならざるを得ないよう。このため、大動脈の裏側の観察が構造上難しくなります。

これに加えて、あろうことかグレン手術による左右肺動脈の吻合部が、なんとこの再形成した大動脈のちょうど裏側という相性の悪さ。 ただでさえ見えにくい場所の、しかもちょうど真後ろ。カテーテルにかなり熟達した医師でもエコーだけでこの部位を詳細に観察することは極めて困難だったということです。


もちろん主治医もそれを認識していて、あまり観測できないこの肺動脈を定期的に見てあげようということで中間カテーテル評価を行ったところ、 開けてびっくり玉手箱。ずばりドンピシャに隠れてた部分がやれちゃってたという流れだったのです。

カテーテル検査の意義は達成されている

つまり、主治医の読みはある意味的確だったと言うことです。

左心低形成症候群の子にしてはサチュレーションも血液検査もエコーもレントゲンも、なんもかんもそれなりに優秀な検査結果を毎回叩き出していたあっくんに対して、 それでも万が一のことがあってはならないから念の為にカテーテル評価を行いましょう、という流れから今回の閉塞が見つかったわけですから。

これだけ結果が良ければ、主治医によって大丈夫でしょうと流されていた可能性もあるところで、敢えて検査をして下さったのです。 慎重派と噂される先生ならではのご判断だと思います。

どうやって見つけたのか?

造影剤を注入してX線撮影をすることで血流がわかるのですが、その検査で判明しました。


まず右肺動脈側から造影剤を注入した際、その左肺動脈側のフローが遮断されていました。これは大変です。

左肺動脈が欠損してしまってやいないかと、今度は左肺動脈側から造影剤を注入すると、やっぱり右肺動脈へのフローが遮断されます。 ただし、左肺動脈は欠損まではしておらず、細いにせよまだ使える見込みがあるとのことです。

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なんで左肺動脈は閉塞しているのに生き残っているのか?

側副血行路という異常血管が左肺動脈と結合したため、かろうじて栄養が行き渡っていたようです。

側副血行路とは

心臓病児にはよくあることのようで、グレン循環だとチアノーゼが解消されていないのでサチュレーションが低くなります。 すると体は「あ、サチュレーションが低い。血が足りない。もっと血管よこしてあげないと。」と言わんばかりに、 ウジャウジャした血管が肺や肺動脈にまとわりついていくようです。

これによってサチュレーションが上昇します。一見良いことのように見えますが、実はそうでもないのです。 この側副血行路は主に動脈(特に内頚動脈)から伸びてくるようなので、本来であればこれはチアノーゼを増幅させる危険因子です。

しかし、グレン循環等心臓病持ちの場合にはたまたまいい感じに釣り合ってサチュレーションを上げてしまうようで、体が勘違いしてどんどん増やそうとしてしまいます。

あんまりひどいときにはコイル等で焼き切ることもあるようですが、いたちごっこ的で切りがないので、通常はフォンタン手術まで経過観察をするようです。

フォンタン循環に到達しチアノーゼが解消されれば、今度は体が「あ、こいつはサチュレーション下げるやばい血管だ。控え控えー!」と言わんばかりに、 異常血管が消えていく形で、ゆくゆくは改善されるようです。

で、なんで肺動脈は生き残ってるの?

そんな本来は邪魔な側副血行路くんのおかげで、閉塞された左肺動脈のフローが確保され、栄養が届いていたようです。 だから、かろうじて血管が残っていたとのこと。


ありがとう、側副血行路くん。

なぜ閉塞したのか?

真因は不明です。

推定原因としては、左右肺動脈吻合部の隆起でフローが滞り、血栓が生じたかも?程度の推測しかできない状態です。

素人目線では、左右の血管を吻合するときにそんなに隆起するものとは思っていなかったので、なるほどそんなこともあるのかと感じた次第です。

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放置はできない

とは言え、異常血管に頼ってばかりはいられません。なんとか閉塞状態を解消しなければ、まともにフォンタン循環に到達することができません。

だから、

このままではフォンタン手術ができない。追加で処置が必要だ。


という流れになったのです。

あわてない

確かに今回の件は予想外の展開ではありますが、あわてず冷静にことに当たれば、きっとおのずと光明が見えてくるはずです。

今回も禅語に力をお借りすることにします。

春来草自生。(はるきたらば くさおのずからしょうず)


春になれば勝手に草は咲くものです。私たちがどう頑張ったところで、花が咲かないということはないでしょう。 (ビル○様とかフリー○さんとか地球ごとぶっ壊せるなら話は別でしょうが笑。)

逆に言えば、しかるべきタイミングできちんと花は咲くはずなのだと思います。焦って咲いた花は、かえって気候の変動に振り回され、早く枯れてしまうのが自然の法則というもの。

遅れようが、予想外のことが起きようが、焦てず騒がず、まずは落ち着いて今できる最善の策を講じるべき。おのずと時は訪れ、事はなるように解決されるはずです。

やれることが同じなら、泣いても笑っても、結果は変わらないのですから。

おわりに

長くなってきたので、今回はひとまずここまでです。

次のエントリでは、今後の治療方針について説明します ^^ ↓ www.akkun-ikiru.com

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あっくん:(いやはや、まさかこのわたくしがカテ評価で躓くとは思っておりませんでしたな。てへ! from 夢の中)

おとーちゃん:笑い事ではございません ^^; またもうちょい頑張ってもらわなくちゃいけなくなったけど、何とか辛抱してけれや、あっくん。


あっくん、ひとまず手術成功です

先日、あっくんの緊急手術についてちょろっと述べました。

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今回、ひとまず手術自体は無事に終わりました。今はPICU(小児集中治療室)で術後処置を受けています。

現状

術後の経過としては、そんなに良くもないけど、悪くもないといったところです。無気肺が確認されたこともあり、ここまでで人工呼吸器の脱着も複数回行われています。

サチュレーションが低く酸素はハイフロー(8L/min)、肺血圧を下げるべく一酸化窒素(50mL/min)も注入中。

手術概要

当初はうまくいけば左肺動脈を再建しようというお話でした。

しかし、残存している左肺動脈が非常に細いため、形成術は断念。術中判断にて、代わりに下記手術が行われました。

大動脈・左肺動脈間シャント形成術


要は、ざっくり以下の通り。

  • 左肺動脈の衰弱が著しいことが開胸時に判明。
  • 現状で肺動脈再建術を行っても、フローが確保できる見込みが薄いと判断。
  • そこで、まずは衰弱した左肺動脈の再成熟を期待して、大動脈から左肺動脈にシャントを形成。

もちろん、こうなる可能性も示唆されてはいました。ありえる選択肢の中では妥協的なものではありますし、これで肺動脈が十分成長する保証もありません。

ですが、当然何もできないよりはずっとベターです。

あぁ!文字だけで説明するのは多分伝わらないですよね汗。分かってはいるんですけど…。

その他詳しいこと含めて、後日図と共に説明を行うエントリを上げます。

感謝

事実を記述すると、上述のような歯切れの悪い説明をせざるを得ないのが心苦しいです。

しかし、医師やスタッフの皆様のご協力のおかげで、このように今出来る処置を精一杯してもらえて、私はとてもありがたいと思っておりますし、安心して医療を任せています。

だって、この病院で処置してもらえていなかったら、あっくんは生後1ヶ月以内に確実に死亡していたのですから。

それに比べれば、退院後もあっくんといっぱい戯れることができて、今も生きていることを確認できている。アンパンマンやおかあさんといっしょに夢中になるあっくんを横に、やれやれとにやにやするおとーちゃん(←変態か笑)。何はともあれ、親としてこんなにうれしいことはありません。

これほど幸せな時間を提供してくれた病院スタッフの皆様には、心から感謝する気持ちしかありません。

あっくんにも、生きていてくれていることに対して感謝の気持ちしかありません。

知足

禅の視点から

東洋哲学の真髄である「禅語」に良い言葉があります。

知足(ちそく)


いわゆる「足るを知る」です。たった二文字の単語ですが、人生のエッセンスが凝縮されています。

以下もほぼ同義。

山僧活計茶三畝。漁夫生涯竹一竿。(さんそうがかっけいちゃさんぽ。ぎょふのしょうがいたけいっかん。)


坊さんは小さな畑さえあれば一生食っていけるし、猟師は竿一本あれば生涯安泰だよね、というもの。

どれもこれも、あれもこれも期待する前に、まずは手にあるもので満足することが生きることの本質なんじゃなかな、ということを実に端的に表現したものです。これは、東洋哲学が残してくれた偉大なる贈り物ではないでしょうか。

心理学の視点から

更に、西洋心理学の分野でもアドラーがこの境地を提示しています。

アドラー心理学では、何を所有しているかで価値判断を行い他者よりも不足する場合にはその境遇を嘆く(←これを劣等コンプレックスと初めて定義したのもアドラーらしい)ことを正当化(?)しかねないフロイトの精神分析学を「所有の心理学」として真っ向から否定しています。(だから彼らは泣き別れることになったんでしょうね。)

他方アドラーは、与えられた境遇の解釈方法や、その活用方法によって、万人は今この瞬間から幸福になれると主張する

「使用の心理学」


を提唱しているのです。これ、まさに知足の境地に通じるものであります。

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是、真理なり

東洋哲学では経験論的な積み重ねからエッセンスを抽出した結果「知足」が生まれました。

アドラー心理学でも、事実を元にボトムアップ的に淡々と理詰めで議論すると、結局「知足」に辿り着く。

これはとても不思議なもので、古今東西で皆が同じことを言うのですから、マジで真理なんじゃないかと思います。

これだから古典もいっぱい読みたいのですが、いかんせん読む時間が確保できなかったり、ね(←愚者の言い訳です。トホホ…)。

おわりに

とにもかくにも、あっくん、手術よく頑張りました!

またあっくんといっぱい遊べる日が来るのを楽しみに待っているからね。

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あっくん:(なーにしんみりしてるんすか?そういうのいいですから、会社休んでないで、あなたは働いて稼いできなさい! from 夢の中)

おとーちゃん:耳が痛いですね ^^: うまく調整すれば何とかなるんだから、そういうこと言わないの笑。何はともあれ、よく頑張ってくれたね。土日にまた会いに行くぞよ! ^^


あっくん、明日手術です

お久しぶりです。

だいぶ更新が滞ってしまいました。

心も身体もフルスロットルです。はひー。

色々ありましたが、ようやく手術にこぎつけました。

さーて、今回の手術は~?

肺動脈形成術


朝一に始まって、夕方くらいに終わるらしいです。うん!長い!

はい!手術の説明は以上!

というのは冗談で、経緯はいつか記します。今は、時間がありませんゆえ汗。

明日に備えて、もう寝ます笑。

さぁ、頑張るぞ!

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あっくん:わたし、失敗しないんで!

おとーちゃん:それ、お医者さん側のセリフのような… ^^;